こんにちは。オフィス謝府礼の阿部です。
介護保険制度は都道府県知事や市町村の許認可(指定)を必要とするものの、広く民間の事業者にも開かれていることから、民間の営利法人でも訪問看護ステーションを開設することができ、医療サービスの一端を担うことができます。一部上場企業が運営する訪問看護ステーションというのも珍しくありません。理学療法士等が活躍する場も訪看ステーションを活用することで広く展開されてきましたが、ここ数年は過剰なサービスが問題視され、訪問リハビリテーションにおいては、往時ほどの勢いはなくなってきた印象があります。
▽リハビリ職開業議論
アメリカではリハビリ職がその専門性を活かして個人的に開業することができますが、日本では認められていません。これまでリハビリ専門職による開業を認めるべきという要望がある一方、業界団体は医療機関に勤務する理学療法士等の減少による質の低下が懸念されることからこの議論には消極的で、リハビリ専門職による開業には反対という声明も出され見通しは定まりません。
一方、訪問看護の普及ということに目を向けると「利用者や介護者に訪問看護の必要性を理解してもらえていない」ことが障壁になっているという報告もあり、訪問リハビリはサービス形態がシンプルである分導入がしやすく、そのため訪問看護ステーションによるリハビリテーションサービスが普及しやすかったのではないかと考えられます。
こうしたことが背景のなかで拡大してきた訪問リハを対象に報酬面を絞るというのはなんだか的を外している感もありますが、患者を消費者に例えるならば、消費者が置き去りにされた状態で議論が進められているのではないかという印象があります。
▽医療・介護における情報の非対称性の壁
ことに医療は情報の非対称性が大きいといわれています。 “情報の非対称性”とは、『需要側と供給側との間に保有する情報の質や量に差異があること』を言いますが、「どのような場合に訪問看護が必要になるのか?」
「どのような場合に訪問看護を導入すれば効果があるのか?」
ということを消費者自らが知らなければ、おのずとサービス導入の検討にあたり消費者は受け身にならざるを得ず、積極的なサービス検討ということができません。
訪問看護の必要性を判断するいくつかの材料として、食事と栄養(誤嚥や脱水の有無)、排泄(排便・排尿コントロールの状況)、清潔(入浴介助の必要性の有無や口腔内清潔の保持)の状況などがありますが、
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これらがどの程度の段階(自分でできるのか、誰かの介助があればできるのか、あるいはできないのか)になれば導入を検討すべきなのか
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どこへ相談すれば良いのか
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消費者がサービス提供者を判断する材料はどんなところにあるのか
といったことを、もっと積極的に公開して利用の促進につなげる努力をしなければ、状況はいつまでたっても好転しようがありません。
▽おわりに
在宅領域のサービス需要は今後も高まり、また在宅領域が今回のコロナ禍で一定の強みになることが明らかになった今、事業所それぞれがこれまでの地域との関わりの在り方や情報発信の手段を見つめ直すことが求められています。
また法制度においても、ネガティブな議論により制度が整備される状況から、ポジティブな議論により制度が発展していくことが期待されます。