こんにちは。オフィス謝府礼の阿部です。
介護報酬の加算のなかに、「特定事業所加算」というものがあります。居宅介護支援事業所や訪問介護事業所を対象に、Ⅰ~Ⅴ段階までの加算が設定されており、その主な目的は利用者により良いサービスを提供している事業所を評価するものになっています。そのため、要件には「個別の研修」や「定期的な会議の開催」、「サービス開始にあたりサービス提供責任者と訪問介護員の適切な情報共有」をすることなどが定められています。
▽考課表をコミュニケーションツールとして活用する
先日、ある介護施設の施設長から個別研修の設定に関する質問を受けました。その施設では、以前よりスタッフ間でのサービス提供の内容に不均衡があり、会議で決まったことが実施されない、実施されてもそれが長く続かずすぐに元に戻ってしまう…といったことが課題とされていたのですが、そのことでスタッフ間でも不満が溜まってきている背景があるようでした。
そこで情意考課や能力考課のベースを整備し、まずは自己評価をしてもらったうえで上長がその内容を確認し、この2つのツールをもとに全スタッフと面談を実施することを提案しました。
本来、情意考課や能力考課は業績考課とあわせ、人事考課のツールとして使用することを目的にしていますが、今回はコミュニケーションのツールとして、情意考課と能力考課を活用することにしたのです。
▽組織への帰属意識
面談といっても、何をどう話したらよいか分からず話しを進められないといった声もよく聞きますが、この方法でしたらこれらのツールがガイドとなり、スタッフのどこにフォーカスをすればよいかが、分かりやすくなります。情意考課の質問の中で本人が上手く理解できていないところ、能力考課のなかで不安や弱みに感じているところに焦点をあて、その部分について支援してあげることで、本人の能力向上に繋げることが期待できます。
またこうした取り組みをすることで、冒頭であげた特定事業所加算のうちの個別の研修ということについて、よりリアルな個別研修の立案やグルーピング化をすることも可能になります。 特定事業所加算の目的の一つは「利用者により良いサービスを提供しよう」ということにあり、そのための取り組みを実施している事業所を評価するものですが、スタッフがスキルを上げていくことは質の高いスタッフの育成にもつながり、そのまま事業所としてのメリットにもなります。
個別研修は事業所として目指してほしい課題を設定することも重要ですが、現場に寄り添った内容を落し込んでいくことが肝になります。この際、一定のスタッフが苦手としている知識や手技の講師を、それを得意としているスタッフに講師役となってもうらことで、教える側にもその知識技術をより深堀してもらうことができる他、こうした循環を通して組織への帰属意識を高めていく効果も期待されます。
あらゆる機会を通じて、組織としての一体感を高めていくための工夫をしていくことが重要です。