職業集団の罠

こんにちは。オフィス謝府礼の阿部です。

医療機関には、医師、看護師、薬剤師の他、理学療法士や作業療法士、あるいは放射線技師や臨床検査技師といった、様々なプロフェッショナルが集まっています。医療が知的労働集約的産業と言われる所以です。それぞれの資格には、医師法や看護師法、薬剤師法といった法令があり、また専門職種それぞれに学会が存在しています。

こうしたプロフェッショナルの集まりである医療機関には、身体に不調や不安を抱えた人たちが訪れ、医師をトップに患者さんに対する指導や治療計画がたてられ、医師の指示をもって、各プロフェッショナルが患者さんが病気から回復する出助けをしています。

医療を受ける側の患者さんは、医療機関に対し、診察や注射、投薬などの対価として医療機関に3割や1割の自己負担分を支払い、医療機関は残りの7割や9割分を保険者と国から受け取ることで、経済活動が成り立っています。

 

 

当然、患者さんが来なければ診察は行われないので、医療機関は収入を得ることができません。 こう考えると、医療機関も経済活動を行うためには、なんらかの戦略をたてる必要があることが分かります。地域にあまりない診療科だったり、より自分たちの強みを活かした診療科を伸ばすことで患者さんにきてもらい収益を得ていく、といったことがもっともシンプルな形でしょうか。

 

▽職業集団の罠

多職種からなるプロフェッショナルの集団であるがゆえのジレンマを抱えた医療機関をみることがあります。多くの医療機関では、医師がそのまま自らの医療機関のトップを務めています。チームスポーツに例えればプレイングマネージャーであり、診察もするし、経営もする。

元来トップの医師がはじめた診療所/病院ですから、トップの医師にもっとも多くの患者さんが集まる。結果、細かなところは置き去りにされ、他の部署については、同じくプロフェッショナルである個々に任せることになる、といったことが往々にしてあります。

この時、「他の部署の人たち」に依存してしまう集団である場合、組織が上手く機能しない傾向にあることに留意が必要です。地域に資源が少ない診療科であったり、特徴のある強みを生かした診療科である戦略がハマっている場合には、業績も伸びていきますが、何か問題が発生すると途端に綻びが目立ちはじめてしまうのです。

勢いに乗り組織を伸ばしていくことは組織が成長するための大切な要素だと理解していますが、この期間にもスタッフの教育や面談を通して、組織が目指す方向と個々人の思い描いている姿がズレていないかを確認するなど、「人」に視点をおいた組織運営をしておくことが重要です。

 

▽人に視点をおいた組織運営のポイント

人に視点をおいた組織運営のポイントはいくつかありますが、 具体的には、

1.マニュアルによる業務の可視化・標準化を行う

2.職務基準を整える

3.教育カルテによりスタッフの見えない弱みや強みを可視化し、教育機会を設ける

4.スタッフのパーソナルシートを作成する

5.情意考課や能力考課といった人事考課制度を取り入れる

6.面談を通して、スタッフとの距離を深めていく

などは優先的に取り組んでいきたいところです。

 

スタッフ数が20名を超えてくると、人事面の配慮負担も大きくなりますが、ここで取り上げたようなことを行っていくには、相応の事務職員の存在も求められます。

しかし事務職員は元来利益を生まない「コスト・センター」であるがゆえ、ともするとその存在が軽視されがちですが、少子高齢化による生産年齢人口の減少(働き手不足)が深刻な打撃をもたらす可能性があることから目を背けることはできません。 医療機関にも組織活動を意識した活動をすることが求められています。

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