病院と保育 時代背景における役割を考える

こんにちは。オフィス謝府礼の阿部です。

珍しいことがあるもので、先日保育園に関する相談が重なった事例がありました。個人からの相談とクライアント先の病院からと、それぞれで内容と背景は異なるものの、保育所に関する相談を受け、調査を進めていくうちに考えさせられることがありました。

2016年(平成28年)に「保育園落ちた~」というつぶやきが待機児童問題に与えた衝撃は今も記録に新しく、SNSの威力をまざまざと見せつけられた感がありましたが、今、この問題はどうなっているのでしょう。

平成28年の保育所の数は、全国で30,859カ所。利用定員数の2,604,210人に対して、利用児童数は2,458,607人。

平成29年になると保育所の数は増え、全国で32,793カ所。定員は2,703,355人まで増え、利用児童数は2,546,669人。

平成30年には、保育所は全国で34,763カ所、定員は2,800,579人のキャパとなり、利用児童数は2,614,405人。そして、令和3年には保育所の数は全国で38,666カ所、定員は3,016,918人にまで増えました。

 

この効果もあり、平成28年に全国で23,553人いた待機児童は、29年に26,081人と一時的に増えたものの、30年には19,895人。

そして、令和3年には5,634人にまで減少しています(一部の地域、特に関東圏の東京、千葉、埼玉では、他の地域に比べ待機児童数が多いなど地域差があります)。

 

 

▽企業主導型保育事業

待機児童を減らそうと、「企業主導型保育事業」の設置運営条件などで規制緩和が進んだこともあって、この制度を導入して院内に保育所を設ける病院が増えました。

この制度は企業向けの制度で、平成28年4月以降に新たに保育施設を設置する場合において、運営費や整備費などが助成の対象になるというものですが、待機児童問題がある一方で、定員割れをしている企業主導型保育所もあると聞きます。

企業主導型保育はその企業に勤める従業員の福利厚生としての利用の他、地域枠を設けることで地域からの利用者を募ることもできるものですが、一方では「充分な運営ができていない」という声を聞くのも事実です。

そこには、やはり認可保育所の利用料との差や、一般の方から見た企業主導型保育所に対する理解不足があるように感じます。過去におきた無認可保育所における痛ましい事故等の影響も尾を引いているのでしょう。

 2019年10月からは幼児教育・保育の無償化が全面的に施行され、いま定員割れをしている企業主導型保育所においては、ますますその差が開いてしまうことも心配されます。

 

▽おわりに

ここで、地域の課題に取り組もうという姿勢や理念を否定するつもりは微塵もありません。むしろ、こうした課題に積極的に取り組むことは価値のあることだと理解しています。 言いたいことは、当たり前のことではありますが、周囲の雰囲気や一時の感情に流されることなく、地域の状況やニーズを見極め意思決定を下すことが重要だ、ということです。

企業主導型保育所を設置している、またはこれから設置しようという病院においては、院内の子育て世代の声や、外に出て地域の声を聞いたうえでの決断を下し、運営に参加した後もこれまでと同様な思いをもって地域との関りをもっていくことが重要だと考えています。

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