年齢も50を超えてくると、当然親もそれなりの年齢になってきます。
周囲の知人からも、「親の通院のため」や「入院や手術のため」に仕事を休まなければならないという声をよく聞きます。とくにお店を一人で切り盛りしているような人にとっては、1日のうちの大切な時間を割くことになる不安は、言葉にはしないまでもどこかで感じていることは想像に難くありません。

▽介護離職問題
介護離職という言葉が大きくクローズアップされたのは、当時の安部首相が日本の成長戦略に掲げた有名な「3本の矢(大胆な金融政策・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略)」に次いで、一億総活躍社会の実現に向けて打ち出した新3本の矢「希望を生み出す強い経済・夢をつむぐ子育て支援・安心につながる社会保障」のなかで、介護離職をゼロにするーとうたった2015年頃からと記憶しています。
介護・看護を理由に離職した人の数は、2000年の3.8万人から年代ごとでバラつきはあるものの、2010年は4.9万人、2020年は7.0万人、2023年は7.3万人など、介護保険制度がはじまった2000年以降で1.9倍にまで増えています。
出所:公)生命保険文化センター
<介護離職ゼロ>は受け皿となる介護事業者に対するフォローと、育児・介護休業法の改正というフォローの両面で取組まれてきました。具体的には、
・介護の受け皿の拡大
・介護人材の処遇改善
・多様な介護人材の確保、育成
・介護ロボットの利用促進やICT等を活用しあt生産性向上の推進
・仕事と介護の両立が可能な働き方の普及を促進 → 育児・介護休業法の改正
などがあげられます。
▽育児・介護休業法の改正
2025年4月~、育児・介護休業法が改正されました。「介護」という部分に絞って見ると、
- 要介護状態の対象家族を介護する労働者が、テレワークを選択できるように、事業主が措置を講じることを努力義務化
- 会社は従業員が家族の介護に直面したことを申し出た場合は、介護休業制度や介護両立支援制度(時間外労働や深夜業の制限、所定労働時間の短縮等)の内容を個別に知らせ、利用の意向を確認することを義務化
などがあげられます。
現実的なところでは、介護休暇と介護休業、どちらも賃金は勤務先の規定によるものの、ほとんどが原則無給としているところがほとんどだと思います。
ただ会社も従業員も退職していろんなことが変わってしまうよりは制度を利用したほうが良いのではないかと理解しています。
*介護休業の場合、一定の要件を満たせば雇用保険の介護休業給付金を受けることができます。
出所:公)生命保険文化センター
▽産業ケアマネという存在
介護離職の問題は日本の経済力にも影響を与える大きな問題です。とりわけ40-50代は働き盛りの世代でもあり、会社にとってもその存在は大きいものであることは明らかです。
そのため、厚労省では介護休業制度んどの周知徹底を図っているほか、介護支援専門員(ケアマネージャー)等が家族介護者の仕事と介護の両立支援について学ぶための研修カリキュラムなどを用意しています。
また民間でもこうした取組みは広がっているようで、一社)日本単独居宅介護支援事業所協会が認定する「産業ケアマネ」という資格も広がりをみせているようです。
産業ケアマネとは、事業場において従業員が、介護などの問題を抱えた際に快適な職場環境のもと仕事が起こア寝るよう、専門的な立場から指導・助言を行うケアマネージャーのこと。
引用:ケアマネージャーを紡ぐ会/一社)日本単独居宅介護支援事業所協会
こうした問題は相続などと一緒で、実際に自分の身に起こってから学ぶ…ということが多い領域かもしれません。
実際、私も父が認知症になりはじめた当初は、介護に戸惑う母のフォローのために仕事を休む機会が増えた時期がありました。幸いまとまった休みや長期の休みを必要とすることはありませんでしたが、親の介護と仕事の両立に苦慮している方は、統計に表れない部分も含めると実際にはもっと多くの人がこの問題に悩んでいるのだと思います。
相談できる存在として、産業ケアマネのような人たちがいるということを知っておくだけでも、事業者の方は良いかもしれません。

▽さいごに
人口減少局面の今とICTの普及。考えてみれば、過去にこうした問題があったとしたら、親が施設に入居するか、どちらかの家で一緒に暮らすかの選択肢しかなかったかもしれません。
しかしICTが普及した今では、多少のことはリモートワークでクリアできる部分も多いように思います。もちろん、「職種による」という制限はあるものの、社会資源と現在の技術の恩恵を組み合わせれば、なんらかの課題解決の糸口を見出すこともできるのではないでしょうか。
私たちの前に訪れる問題は、なにかしらの解決策がある状態で訪れるものであって、私たちがそれに気が付いていないだけなのかもしれません。
投稿日:2025年12月27日
