可視化の第一歩(後編):収益の要素を分解する

 こんにちは。オフィス謝府礼の阿部です。

 可視化の第一歩シリーズでは、外来における収益要素の分解についての概要を説明しました。今回は、入院編をお届けしたいと思います。この入院編、まともにとりかかると膨大になってしまいますので、あくまで入口部分についての説明を以下にします。

 

▽入院部門の代表的な収益要素

 入院部門の収益要素は入院基本料に大きく左右されますが、管理するにあたっては、患者数がやはり鍵になります。医業収益の最小単位は、「収益=患者数×単価」です。

 そこで、毎月の入院数と退院数、そして延べ患者数と実人数を把握します。平均在院日数も基本中のきほんです。平均在院日数は、病棟のベッドが全部で何日で一巡するのかの目安になります。平均在院日数が長いということは、病院側の視点でみれば、患者さんの入れ替わりが遅いということ。したがって、入院時に算定できる初期加算や、退院時関連する加算などの算定件数が少なく、これらは結果として1人当たりの単価に反映されてきます。

 詳細は、入院基本料や届出ている特定入院料により違いがあるので一概には言えませんが、少なくとも上記にあげた基本的部分は押さえておく必要があります。

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▽収益要素に影響を与える影の要素:

 入院収益に影響を与える要素の側面には、どんなものがあるでしょうか。

 入院患者数について、中身を分析することが重要です。紹介による入院なのか、外来からの予定入院なのか、または救急搬送による入院なのかを知る必要があります。さらには、これらの要素を分解し、どこからの紹介なのか、どの診療科からの入院か、消防署の管轄はどこか、などを把握し必要な行動を起こすことが、今後の入院数に影響を与えることになります。

 入院だけでなく、退院先についても把握する必要があります。病棟種別により定められた施設基準を満たしているかどうかの判断という意味もありますが、後方連携先の傾向を把握しておき、地域内で活動していくことは、地域包括ケアシステムの構築において重要な役割を果たすことは明白です。

 前方連携、後方連携のどちらも大切にし、入院患者の増患ということに取組むことが重要です。

 

▽その他の要素

 医業収益の要素には、こうした保険診療領域の他に、自費診療の領域があります。予防接種や健康診断についても、同様の視点で必要な要素にはどんなものがあるのか考え、可能な範囲で可視化してみることが有効です。そうすることで、自院にあるニーズを客観的に知ることができます。「ニーズがあるもの=強み」であり、重要な強化ポイントになることを理解することが有益です。

 

▽後編まとめ

 医業収益要素の分解については、前後編あわせてもとても簡単に言葉では言い表せない内容ではあります。診療科や部門が多くなればなるほど項目は増え、A3用紙が複数枚に及ぶことも珍しくありません。

 今回の前後編であげた項目は、基本中のきほんです。でも、これだけでも知っておくと、全く違った視界が開けてくることは間違いがありません。

 こうした数字に触れ、集計するのは医事課のスタッフさんが中心になるとは思いますが、集計して終わりにするのではなく、是非一度グラフ化し、傾向を見てみてください。そして連携室や看護師さん、できれば医師も交え議論をし、収益を向上させていくために必要なことは何か? といった議論を深めていくことを期待します。

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