外国人介護人材の訪問系サービスへの従事がついにスタート

以前から議論されていた「外国人介護人材の訪問系サービスへの従事」について、技能実習は令和7年4月1日、特定技能は令和7年4月21日に施行されました。

出所:厚労省ウェブサイト/外国人介護人材の訪問系サービスの従事について

 

▼想定外に厳しかった要件

外国人の方が自宅等居宅へ訪問し介護を行うということで、それなりに高いハードルになることは従来から予測されていましたが、個人的な感想としては思っていたより厳格化されたという印象があります。

ざっと要件を列挙すると、介護職員初任者研修過程修了者を前提に、

①研修の実施

②一定期間の同行訪問等必要なOJTの実施

③当該人材への説明・意向確認、キャリアアップ計画の策定

④ハラスメント対策の実施

⑤現場で不足の事態が発生した場合等に対応するためのICT活用を含めた環境整備

などが必要なほか、当該人材を採用する事業所には以下の対応が求められます。

(1)外国人介護人材の実務経験

(2)利用者・家族への説明

 

▼外国人介護人材の実務経験等について

厳しいと感じたのは、上記(1)の部分。外国人介護人材に訪問系サービスに従事してもらうためには、原則として介護事業所等での実務経験が1年以上ある者であることが求められた点です。

 

 

例外にはN2相当の日本語能力を有する場合や、利用者・家族の同意が得られた場合に限り、同行訪問を3カ月以上行ったうえで、サービス提供時に見守りカメラ等を活用するなどしたケースが認められるとされています。

 

▼外国からの直接採用の見通しは当面厳しい?!

私自身、これまでベトナムやミャンマー、インドネシアといった国の送り出し機関を多く訪ねてきました。これまでの活動を通じて信頼できるパートナーとも出会え、ミャンマーのパートナーとは、自分自身の勉強のためとも思い、技能実習生として来日が決定している学生20人に、週2回のペースで6カ月ほど日本語の授業をオンラインで受け持たせてもらったこともありましたが、当時N2を有している生徒はさすがにいませんでした。

これらを鑑みると、N2相当の人を直接海外から雇用するのは厳しく、残る手段は介護事業所で1年以上の実務経験がある人か、3カ月の時間投資と見守りカメラなどのICT投資を経て、訪問介護に従事してもらうといった方法が残されます。

初任者研修には最低でも130時間、最短でも1カ月ほどが必要となることを踏まえると、実際に働き始めてもらうまでに4カ月の時間を要することになるため、採用前からしっかりとしたプランを持つことが重要です。

 

▼魅力ある事業所であることは必須

最近、幸いにも20代後半のインドネシア人の男性を神奈川県のある介護事業所様へご紹介させていただきました。こちらの事業所はすでに外国人材雇用の実績も長く、介護福祉士を取得した外国人の方も複数名いらっしゃる会社でした。このようにすでにノウハウがあるところは別として、まだ手探りの事業所も多いと思われます。

こうした事業所にアドバイスできることがあるとすれば、少なくとも私たち日本人からみても働きやすい環境にあるかどうか、ということは大切なキーワードになると思われます。

ある送り出し機関の校長先生は、日本へ送り出した学生からの悩み相談のなかで「A先輩とB先輩の指示が違うことに戸惑いを感じる学生が多い」ことに心を痛めていました。A先輩には「ここで利用者さんを見ていて」と言われ、あとからきたB先輩には「なにボーっとみているの。仕事して」と言われること、皆さんも心当たりあるのではないでしょうか。

 

▼おわにり

日本に外国人が増えることについては賛否両論あると理解しています。しかし少子高齢化という課題先進国である私たちにできることについて、現実と未来をしっかりと見据えて考えていかなければならないと思っています。

先に挙げた事業所の目線はすでに未来へと向いており、「うちで働いたコたちが、自分たちの国へ帰って介護の仕事の先駆けになってほしい」という思いをあわせもって、人材育成に取り組んでいらっしゃいました。

こうした事業所がレアケースとはいえ、羨望の思いで見ているだけでは前進もできません。外国人材採用に悩んでいらっしゃる事業所の方がいらっしゃれば、ご相談だけでもいただければ幸いに思います。

 

執筆日:2025年5月4日

 

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