量をとるか、質をとるか…
このテーマはさまざまな場面で議論されることだと思います。仕事のやり方、勉強の仕方、食事の在り方etc… 最近ではAIの普及やタイパといった言葉の流行からも、量よりは質優位になっているようにも感じますが、皆さんの考えはいかかでしょうか。
個人的には、まず量的手段をとり点から線、面へと広げていくなかで、どこかのタイミングで質的手段にシフトするのが良いのではないかと思っている派です。私たちの仕事を効率的にしてくれるAIも、結局はディープラーニングという猛烈な量を経たのちのアウトプットなのですから。
「質量転化の法則」という考え方があります。これはドイツの哲学者ヘーゲルが提唱したもので、端的にいうと、量を積み重ねることで質的な変化が起こる現象のことをいうとされています。
しかし、本当にそうでしょうか? ここに自らの気づきや意志が入らない限り、自然発生的に質量転化の法則は起こらないのではないでしょうか。
運動では何百回、何千回の反復練習を繰り返すなかで、自然と体の力みが消えるということもありますが、意識した反復練習とそうでない反復練習では効果が違うように、気づきや意志がなければ、勝手に量が質に変化するとは思えません。
話は変わりますが、売上の減少が目立ってきたある通所系介護サービスの事業者がありました。ご存知のように、介護サービスは利用者の方の要介護度によって、事業者が得られる報酬が決まっています。
この事業者ではサテライトが一つ増えたことによって、分散することがある程度想定されていました。また地域では要支援者に対する介護予防サービスの受け皿が少ないといったこともあり、こうした利用者の問い合わせが増えていました。
このとき、まず量的手段により利用者の獲得を進めていったのですが、出口戦略が意識されていなかったため、気が付いたときには最初1割強だった要支援者の利用者が3割に迫るほどに増えており、地域ニーズとして介護予防サービスの需要はあるものの、経営的にはまずい状況に陥ってしまったというケースがありました。
幸い、管理者が早いタイミングで気づき、戦略を切り替えたことでダメージは最小限に抑えられましたが、これなども意識されなければ良くない方向にどんどん進んでしまう良い例だと思います。
絶対的に量は大事。でも気づきや意志がそこになければ、勝手に質が良くなるとは思えない。そんなことを考えさせられた事例でした。
2025年4月21日