診療報酬の改定が2年に1回であることは、医療関係の方なら多くの方がご存知のことかと思います。しかし、最近では期中改定などもあり、情報を早くキャッチすることが大切になってきました。
今回テーマとして取り上げた薬価も、以前は診療報酬にあわせ2年に1回の改定だったものが、令和3年度(2021年度)からは毎年改定されるようになりました。背景には医療の進歩に伴い高額の薬価が誕生してきたため、速やかに対応しないと保険制度の綻びにも通じることなどが、主な理由として挙げられています。
今回はそんな薬価について、書いてみたいと思います。
▼はじめに
「妥結」という言葉があります。妥結とは、医療機関と医薬品卸会社の間で納入される商品の納入価格を正式に決定する、という意味です。医薬品はそれぞれ定められた薬価によって診療報酬請求されていますが、医療機関が医薬品卸会社から納入する際には、薬価よりも安い納入価で取引されるのが通常です。
そして、納入価と薬価の差はそのまま医療機関の利益(薬価差益)となる為、医療機関は医薬品卸会社と交渉して、できるだけ安い価格で納入するような交渉が行われています。
▼薬価の改定について
冒頭にも述べた薬価の改定。薬価改定とは、医療機関等で使われる医薬品の公定価格である薬価を見直すことをいいます。薬価改定が行われると、大半の薬は改定前に比べて薬価が下がるのが通例です。
その理由は、医薬品卸売業者と医療機関の間では、薬は薬価よりも低い価格で売買(実勢価格)されるのが一般的であり、そのため実態に合わせて薬価を引き下げるというのが基本の考え方にあるためです。
ちなみに薬価改定にあたって、キーワードなる言葉に「乖離率」があります。乖離率とは薬品の市場実勢価格と薬価の差をパーセンテージで表した数値のことで、例えば、薬価1000円の薬の市場実勢価格(医薬品卸売業者と医療機関との売買)が900円だった場合、乖離率は10%となり、これらの数値をもとに改定で薬価の引き下げ幅が決定されるという仕組みになっています。
患者さんにとって、薬価は一部負担金にかかわってくるものであり、残りを保険としてカバーしています。そのため高額薬が多くなると、患者さんの一部負担金が重たくなるだけでなく、国としても社会保障費に関係してくるため、国としても薬価は下げたい…。
一方で卸・製薬会社は高く売りたい。医療機関等は安く仕入れたい(薬価差益)。薬価が高いままだと患者負担は大きいし、保険でカバーする額も大きくなる…というのが薬価をとりまくおおまかなイメージといったところでしょうか。
▼妥結率というワードの意味
薬価を巡っては、とくに医療機関や薬局などで使われる「妥結率」という言葉があります。医療機関(200床以上)や薬局は、毎年4月~9月末までの間に購入された薬価の総額と、卸売業者と医療機関との間で取引価格が決められた薬価の総額を報告することが決められています。
かんたんに言うと、妥結率とは医薬品の取引価格に関して妥結(決定された納入価格)された状況を示す指標で、卸業者と医療機関との間で医薬品取引価格がどれくらい定まったかを示す数値のことをいいます。
薬価というのは、実際の取引価格(市場実勢価格)を元に決められるため、卸業者と医療機関の間での価格交渉が長引くと、卸業者側はいくらで納入すればよいか見込みがたちにくく、取引は仮の納入価で行われることが多くなります。
しかし、こうした状況で取引が続けられると仮の納入価は高く設定されやすい傾向となり、結果として次回の薬価改定に影響を及ぼす、という状況にあったといわれています。
そのため、一定期間における妥結率が低い(5割以下)医療機関は、ペナルティとして初診料等が減算される、といった措置がとられるようになったのが「妥結率等にかかる報告」です。
▼なぜ妥結率の報告が義務化されたのか?
妥結率の報告が制度化される前は、妥結しないまま仮の納入価で取引が長期間行われることが慣習としてあったといわれています。
一般論として、卸売業者と納品側(医療機関)における通常の取引は、納入予定の商品の見積りを取り、お互いに納得した形で取引が行われるものであることは、想像に難くありません。しかし、医療業界では仮の納入価で商品(医薬品)を納品し、後から正式に取引を定める場合が往々にしてみられたため、前項で述べた通り薬価の改定に影響があり、これを是正するための措置、といわれています。
▼整理
整理しましょう。
薬価改定は、卸売業者と医療機関で行われる取引価格が、一般的に薬価よりも低く設定されているため、実際の流通状況を鑑みて、取引価格(実勢価格)と薬価の乖離を是正し、適正な薬価に引き下げる役割を持っています。
以前、医療機関は納入価と実際の薬価の差により発生する「薬価差益」というものがありました。これはもちろんいまも存在していますが、現在では頻回に行われる薬価の改定もあり、この薬価差益は残念ながら着実に縮小しています。
医療機関がいくらで仕入れているかは企業秘密的な部分もあり、情報を入手することは難しいですが、薬価については厚生労働省のウェブサイトでも公開されています。
令和7年4月1日適用分
https://www.mhlw.go.jp/topics/2025/04/tp20250401-01.html
最近は薬価だけでなく、診療報酬でも期中改定があるものが増えてきたので、情報を着実に掴んでいくことが大切になってきたと感じています。
2025年3月20日