厚生労働省が公開しているNDB(ナショナルデータベース、以下NDB))をご存知ですか?
これは2009年から「高齢者の医療の確保に関する法律」にもとづき、レセプト情報と特定健診(特定健康診査)及び特定保健指導情報を収集した、匿名性の高い医療保険等関連情報データベースのことです。
厚労省のウェブサイトはこちら↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000177182.html
2024/9/14時点では、令和4年度のレセプト情報と令和3年度の特定健診のデータである第9回までが公開されています。
▽NDBとは
レセプト情報は診区ごと(基本診療料や医学管理、在宅医療などA~Nで区分されている診療報酬項目のこと)で集計され、性年齢別の算定回数や都道府県別の算定回数などが集計されており、第6回目からは診療月別の算定回数や二次医療圏別の算定回数などが公表されているので、自院が属する二次医療圏での算定回数などを、自院のそれと比較すると自分たちでもベンチマークなどができるようになっています。
基本データはExcel形式で提供されており初見だと情報量に圧倒されそうになり、もし本格的に分析しようとすると、そこは一つ一つ丁寧に処理をしていくしかないのですが、ありがたいことにこれらの項目をすでにグラフ化した「NDBオープンデータ分析サイト」というものも用意されています。
▽例えばこんな雑学的見方
NDBデータベースは特定健診の情報なども入っていると冒頭で記載しましたが、例えば肥満度を表すBMIを都道府県別にみると次のようなグラフになっていました。
ちょっと見づらいかもしれませんが、一番右側の突出して高い線を示しているのは沖縄県で平均値が24.50。反対にもっとも低い値を示しているのは京都府で平均値が22.99などとなっています。これなどは、生活習慣病関連の多さと併せて深堀していくと面白いかもしれません。
次に一般的にも気になる高血圧について、収縮期血圧(俗にいう上の血圧)のデータを選択すると、次のようなグラフをみることができます。
先入観として、「寒いところに住んでいる人は血圧高そう…」という印象があるかもしれません。
実際にグラフを見てみるとやはり東日本側のほうが、西日本側より赤い色が多くなっていて、平均値がもっとも高い山形県で128.00、岩手県で127.93、秋田県で127.74などとなっている一方、鳥取県でも127.78や、山梨県127.45などとなっていて、沖縄県は126.70などとなっています。
ここで気になってくるのはお酒との関係で、お酒といえば肝機能なので、γ-GTPについてもみてみると、次のようなグラフをみることができます。
一番高いのは青森県で平均値が44.02。収縮期血圧が全国平均でもっとも高かった山形県は38.74と全国平均に近い数値ですが、秋田県は43.08、ずっととんで沖縄県が41.98などとなっています。
こうなると、飲酒の習慣と肝機能の値の相関があるのかどうかと気になってきてしまいます。そこで、政府統計の総合窓口e-Statから、都道府県別の飲酒習慣者の割合についても調べてみました。
結論だけ述べると、青森県の平均値は51.6、秋田県は46.9と確かに全国的にみても高いのですが、沖縄県は30.8と必ずしも高くはありませんでした。
ひょっとすると、泡盛は肝機能に優しいお酒なのでしょうか…。
▽データ分析を身近に。そして可視化の面白さ、重要さの理解にも。
いかかだったでしょうか。こんな風にみていくと、雑学的な話しとしても話題提供には面白そうですし、本格的な学問的調査の入口にもなりそうです。
そしてなにより、身近な問題をテーマに、どこに視点を置けばよいかといった訓練や可視化の面白さ、そしてその威力というか、重要性にも気づいてもらえる一助になるのではないかと考えています。
今後生成AIが普及していくと、データを取り込めば自分たちでも簡単に可視化ができる日も遠くないかもしれません。そうなってくると、データ分析の力よりは、着目するべき視点であったり、導き出されたデータに対する洞察力だったり、得られた結果から次につなげる行動力、といった能力が求められてくることになりそうです。
NDB。まだご覧になったことがないという方は、是非一度、実際に見てみることをオススメします。
2024年9月14日
オフィス謝府礼 代表 阿部 勇司