デジタルの時代

24年度の診療報酬改定の個別改定項目をみていると、情報通信機器の活用や医療DXの推進などICTに関連する言葉が多くでてきています。

またプログラム医療機器、いわゆる治療用のアプリで医療材料として認められているものについては、医学管理料が算定できるようになっていることなども時代の流れを象徴しています。

医療や介護は、先進国からみてデジタル化が遅れているとされた日本のなかでも、取組みが遅れいていると言われ続けてきましたが、ここへきて否が応でもデジタル領域へシフトしていかないと業界のなかでも取り残されるのではないかと感じています。

 

▼インターネットの利用の現状

 

左上図は国内におけるインターネットの利用状況を、右上図は年代別の利用状況のグラフですが、インターネットの利用者は2000年以降急速に伸び続け、いまや国民を8割が利用しています。

年代別では、高齢層になるほど落ちてはいますが、それでも60代では70%強、70代でも6割ほどの人が使っていることが分かります。

6月から施行される診療報酬改定でも、院内掲示が義務付けられている事項については、「デジタル原則に基づき、書面掲示することとされているものについては、原則としてウェブサイトに掲載しなければならない」とことなどが義務づけられることとなりました。

少し話は変わりますが先日在来線の特急車両に乗車している際、周辺に座る4割ほどの人がPCを開いていた姿は印象的でした。パッと見る限りはビジネスマンではなかったので、仕事をしているわけではなさそうでしたが、モバイルそのものがあって当たり前の世界になっているのを否定する人はいないことでしょう。

 

▼井のうちがわ

よく、井の中の蛙、あるいはガラパゴスという言葉が使われます。どちらも、自分たちの狭い世界のなかに留まることを諫める言葉だと理解しています。

病院や施設のなかにいると、日々目の前のことに追われることは確かです。

先日、あるご支援先で人出が足りないということから、10年ぶりくらいに外来の受付に立つ機会がありました。普段の流れを知らないため、私にできることはファイル出しとレジ打ちの金銭授受係くらいのものでしたが、多くの患者さんが来院し、思いおもいの訴えを受付で前捌きするのは大変なことだと改めて認識させられました。

 

司馬遼太郎の「風神の門」という作品に、こんな一節があります。

「戦というものは夢中なものじゃ。乱軍のなかにいると、味方が勝っているのか、負けているのやらわからぬ。そのとき、大将たる者が、味方の勝ちぞ掛かれ掛かれ、と声すさまじく喚いてくれれば百倍も元気がでて押してゆく。」

これなどは現代のリーダーにも通じる部分であり、経営者が忘れてはならないことだと感じています。

話しが少しそれてしまいましたが、何が言いたいかというと、リーダーは現場の状況を認めつつ、しかし世の流れ(時勢)ということも現場に伝えながら舵取りをしなければいけないのだと認識しています。

一つの手段としては、有給を与え展示会などに足を運んでもらうのも良いでしょうし、評判の良い同業の施設を見学させてもらうということはとても意義あることだと思います。

 

▼おわりに

次期診療報酬改定では、オンライン資格確認の体制を整備するために補助金をつけて、機器を普及させてきた流れをのなかで「医療情報・システム基盤整備体制充実加算」として患者1人あたり月1回、数十円の報酬を付与してきた流れから、”整備から活用へ”と評価の対象が変わっていくことが明らかにされています。

具体的には、先の医療情報・システム基盤整備体制充実加算という名称が消え、変わって初診時等にオンライン資格確認システムを使って診療情報や薬剤情報を取得・活用することを評価する「医療情報取得加算」へと、その姿を変えていくというものです。

報酬的には数十円、自己負担にすれば数円というものでなのでインパクトはありませんが、こうした小さな部分にも時代の流れが反映されている、ということは認識しておく必要がありそうです。

 

一定の年代にある人たちには、時代の流れを認め、変化していく覚悟が求められているのかもしれません。

 

2024年2月7日

オフィス謝府礼 代表 阿部 勇司

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