「利回り」を考える

「利回り」なんて聞くと、株や何かの投資用語だと思う方も多いと思います。けれどもこの利回り。病院や介護施設が「ハコモノ」という側面もある以上は知っておくと有益だと思うので、今回はこの「利回り」について考えてみたいと思います。

なおここでいうハコモノとは、不動産のことを言っています。病院も介護施設も、土地の上に建物が建っている以上、不動産とは切っても切れません。そしてこの建物が自前か、賃貸借かということが今回のテーマ「利回り」に大きく関係してきます。

 

▼ハコモノにおける利回りとは?

土地や建物が賃貸の場合、その土地や建物を貸すオーナーさんは賃料を徴収します。当然、この賃料は土地や建物の取得に投資した金額を、何年かかけて回収できるだけの設定でなければなりません。

この「投資金額に対する1年間の収益の割合」が利回りで、次のような計算式であらわされます。

表面利回り=年間の家賃収入÷物件の購入価格×100

上記で「表面利回り」という言葉を使っていますが、これは銀行からの借入返済額や管理等にかかった費用を考慮にいれていないため、表面利回りという表現を使用しています。

利回りにはもう一つ「実質利回り」というものがあります。

 

 

▼実質利回りとは?

表面利回りは物件の購入価格に対して、年間の家賃収入にのみ目を向けているものですが、実際の運用においては固定資産税などの税金や保険料、また銀行などから借り入れをして物件を購入している場合の月々の返済など、運用に係る費用が当然発生します。これらを加味したものが「実質利回り」で、次の計算式で求められます。

実質利回り=(1年間の収入ー1年間の費用)÷(物件購入価格+購入時諸費用)×100

ただこちらについては、かかる費用が諸条件により異なります。そのため、一般的に利回りといった場合には、まずは表面利回りのことをいうことが多いといえます。

 

▼医療・介護業界でも利回りという考え方を知っておく必要とは?

現場レベルで働く人は利回りをあまり気にする必要はないと思いますが、事務長や施設長クラスの方やこのポジションを目指す人は、利回りについて知っておくのは有益だと思います。

というのも建物が賃貸の場合、建設にかかった費用と賃料が分かれば、オーナーがどのくらいの利回りを求めているかが推測できるからです(この場合は表面利回りになりますネ)。

普通に考えれば、土地を貸すオーナーはマンションや戸建てを考えることのほうが多いのだと思います。一方で、マンションなどは空室リスクというのも避けることができない課題です。自然、どちらのほうが安定的に収入を得られるかを考えるのは、当たり前と言えばあたりまえのことといえます。

これまでの経験から、病院や介護施設に土地を提供してくれるオーナーの方は、多少儲けを度外視してでも、社会的インフラともいえる施設に理解がある方が多いように感じます。

事務長や施設長はこうしたオーナーの思いがあるということも念頭に、健全な運営努力をすることが求められるのだと考えています。

 

2024年1月5日

オフィス謝府礼 代表 阿部 勇司

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