ある医療法人様で先日、約1年ほどの時間と議論を重ねてきた情意考課が実装されました。
「頑張っている人を評価してあげたい」という院長の思いがこの議論のスタート地点にありました。情意考課の評価項目は過去にも導入した病院様があったので、その評価項目を基準として自分たちにあった項目へとカスタマイズさせながら項目を作り上げていきました。
また情意考課は一人ひとりの「マインド」を評価するものであることから、個人の専門職としての経験年数ではなく、法人での勤務年数によりランク分けを行い、これに積数をかける形とすることなどを決めてきました。
▼情意考課とは
情意考課とは人事考課を行う際の評価軸の一つで、従業員の仕事に対する意欲や姿勢といった、どちらかといえばマインドの部分を評価する手法です。ちなみに、人事考課はこの情意考課のほかに、能力考課と業績考課を組み合わせて行われるのが一般的ですが、なんの評価軸もないといった場合には、評価項目のサンプルなども広く知られているので、人事考課にまだ取り組んだことがない組織には向いている内容といえるでしょう。
しかし、取り組む際にはいくつかの注意点もあります。
情意考課は自己評価と二次考課者である上長評価、そしてさらに上の役職者による評価が行われ、これらを総合的に加味して総合的に評価するものですが、自己評価に濃淡があるのはもちろんのこと、二次考課者以上の者にもなんらかのバイアスがかかることが多くみられます。
そのため導入の際には「考課者訓練」を行い、考課者のクセを知りこれに留意しながら評価をしないと、評価に偏りが生じるだけでなく、被評価者からの不満が募るばかりで失敗の元になるので注意が必要です。
▼導入の実際
さて、最後に導入の実際について少し書いておきたいと思います。先に1年ほどの時間をかけて実装したことを書きましたが、なぜそこまで時間がかかるのか?
スピードの濃淡には組織の大小やタイミングなど様々な事柄が影響してきますが、まず今回の法人様では院長と事務長に人事考課の概要について知ってもらうことからはじめ、導入時期を仮決めのうえ、逆算しながら進めてきました。
決めてきたことはおもに次の2つです。
・情意考課の評価項目と職員様のランク分け
・評価ランクの設定
そして、この間主任クラスのスタッフ様向けに情意考課に関する勉強会を複数回実施し、情意考課の意義について一緒に勉強を重ねてきました。
評価の実施にあたっては自己評価や二次考課者評価と並行して、事務長には全職員との面談も実施してもらいました。これには多くの時間を割くことが求められますが、「大変だったが、一人ひとりと話すことができたのはとても意義ある時間だった」という声を事務長から聞くことができ、最初の壁を越えることができたことを感じました。
▼おわりに
最終的には総合評価に対しての配賦率を基本給に沿って決めるなど、決めなければならないことは多くあります。そのため約1年という時間をかけながら準備を進めてきた情意考課ですが、導入側が覚悟しなければならないことの一つに「どれだけ精緻な人事考課制度を構築しても不満を0にはできない」ということがあります。
こうしたことを承知のうえでなお「頑張っている職員を評価してあげたい」という思いが、導入を成功に導いてくれるのだと理解しています。
そして最後に忘れてはならないことは、「評価はただその優劣をつけるために行うのではなく、被評価者の得手不得手を知り教育の機会へと繋げるためのものであり、また二次考課者以上が評価に際し自らも正すことで相乗的な効果を生むために行うものである」ことを記して、この記事を〆たいと思います。
2023年12月18日
オフィス謝府礼 代表 阿部 勇司