こんにちは。オフィス謝府礼の阿部です。
東南アジアにある病院をみて廻ったことがあります。多くの国では、公立病院は治療費が安く、民間病院は治療費が高いというのが一般的。公立病院と民間病院では建物からしてあからさまな差があり、これをみても受けられる医療にも差があることは想像に難くありません。
格差は収入だけでなく教育にも影響を及ぼしており、収入が低い親の子供はかの国では十分な教育機会すら与えられないことも少なくありません。日本でも、こうした教育格差がニュースで取り上げられていることは皆さんもご存知のことでしょう。コロナ禍でのリモート学習が、この問題をよりクローズアップさせました。医療はどうでしょうか。将来、医療格差は現実のものになるのか…。もしかすると、すでに一部では現実になっているのかもしれません。
(タイの公立病院で診察を待つ人々:2019年1月筆者撮影)
(同じくタイの民間病院にて。ハイランクの個室:2019年1月筆者撮影)
▽民間と公的企業の諸問題
ところで、民間と公立・公的ということを考えた場合、問題を抱えているのは病院だけではありません。身近な例でいえば、水道があります。上下水道の設備が多くの自治体で老朽化が進んでいることに加え、耐震化といった視点も昨今の災害の状況を鑑みれば設備の更新は行わなければならないマストの課題ですが、財政の問題もあり設備の更新は進んでいません。かといって、水道料金を上げるにも限界がある。こうした背景もあって、2018年にはコンセッション方式を導入する改正水道法が成立されました。
コンセッション方式とは、公共施設の所有権を国や自治体が保有したまま、長期間の運営権を民間事業者に売却する民営化手法のことを言います。しかし実際には、水道という生命にも直結する事業を民間に売却しても良いものかといった議論もあり、導入は必ずしも進んでいません。
▽変革を阻害するもの
私が暮らす街の市立病院はコロナ前、今の状況が続けば2-3年後には現金がなくなる、と言われていて、そんな状況をコロナ禍が襲いました。国が様々な支援策を出したことで、ひょっとするとキャッシュについては一息つけているのかもしれませんが、これも結局は問題を先送りしただけとなってしまわないよう、歩みを止めず解決策を考え実行していかなければなりません。
公立・公的病院の場合、事務方は一定の期間が経過すれば異動が伴います。結果、自分の在任期間中になんの問題もなければ御の字という姿勢が、改革が推進できない要因の一つともいわれています。
振返って、私たちはどうでしょうか。やはり何か、既得権益とはいかないまでも、変革を嫌う傾向になっていないか、思いを失っていないかと、ときどき自らに問うていく必要もあるのではないかと考えています。