▼タクシーの車内にて
DX(デジタルトランスフォーメーション)…。
人口減少による働き手が減るなかにあって、経済成長を止めないために生産性向上・効率化が求められているいま、もっとも甘美で魅力的な言葉の一つかもしれません。一方で思わず「?!」と言いたくなる場面にでくわすことも増えてきました。
先日乗車していたタクシー車内。車内のデジタルサイネージをご覧になる方も多いと思いますが、ある広告ではこんな感じのやり取りがされていました。
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先輩風男性が営業から帰ってきた後輩社員に向かい、
「ごめん、いま忙しいから報告聞けないや。報告書書いておいて」
後輩社員「もう○○使って書きましたよー」
といい、すれ違っていく後輩。。。
また、別なシーンでは
先輩社員「ごめん、いま忙しくて営業について教えている時間ないや」
後輩社員「○○で過去の資料読んだのでバッチリです」
と応える後輩。。。
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もちろんこれが一場面を切り取っただけのCM上の演出であることは重々承知しているのですが、このようなやり取りが仮に常態化するとしたら、それはそれで個々人の生産性があがったとしても、組織単位でみた場合の行き違いリスクも大きく、こうしたリスク処理に返って損害的時間が発生しやしないかと心配になりました。

▼ケアプランデータ連携システム導入を巡って
こんなことを考えさせられたのは、あるご支援先で介護職員等処遇改善加算の届出を手伝ったことに起因しています。
ご存知のように介護職員等処遇加算は介護業務に従事する職員の給与の改善を目的に実施され、賃金体系の整備や研修の実施、昇給の仕組み等事業所の取り組み状況によって加算率が変動する仕組みになっています。
とくに令和8年度においては、「生産性向上や協働化に係る取組みを実施」している場合の評価の特例として「ケアプランデータ連携システムの利用」について申告する項目がありました。
ケアプランデータ連携システムとは、居宅介護支援事業所とサービス提供事業所間でこれまで主にFAXを使ってやり取りされていたケアプラン関係のデータを電子化し、異なる介護ソフト同士でもデータ連携によりやり取りできるようにするシステムのことを言います。
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/jigyo/syogukaizen/careplandate(Ver.1.1).pdf
出所:公益財団法人 介護労働安定センター
令和8年度の介護職員等処遇改善加算の計画作成をお手伝いしていたとき、このケアプランデータ連携システムの導入を巡って院長交え話をしていたとき、事務長がこんなことをつぶやきました。「いままで営業も兼ねて実績表を持参していたのに、それしなくて良いのは便利だけど、どうなんでしょうネ」…。
コロナ禍を機に一気にオンラインシステムが普及していくなかで、まだ便利さにばかり注意が向きがちななか、この事務長の発言にはハっとさせられました。
奇しくも今朝の日本経済新聞には日韓首脳がシャトル外交を再開する記事が掲載されていました。実際に現地へ足を運び空間を共にすることで生まれることもある。何事もバランスが大事であることをあらためて考えさせられました。
私は将来的にみればこれがスタンダードになることは間違いないことを主張しつつ、今回こちらのご支援先ではケアプランデータ連携システムの導入は時期尚早ということでまずは見送りとなりました。
これはこれで、私は良い決断だったと理解しています。このご支援先は開業から16期を超え、在宅診療の患者さんを地域でも多くみている診療所であることから、ケアマネージャーさんとのコミュニケーションはとても大切なものであることを自認されています。便利さ一辺倒ではなく、何気ない会話から生まれる信頼感をDXよりも優先させる取組みを、これからもご支援させていただきたいと考えています。
投稿日:2026年5月19日

